部落解放2013年11月号「「在特会」とヘイトスピーチ」(解放出版社)

 人種差別扇動運動とその対抗活動の転換点だとおもう2013年上半期。この時期に起きたことと何が考えられていたかの参考になる特集記事。おもに路上で起きていることについて。法整備や裁判などは触れられていないので、別書を参照してください。


奴らを通すな!―差別・排外主義的行為に対して、政治の側は何をなすべきか/有田芳生 ・・・ 2006年の「在特会」の発足から2013年9月頃までのレイシズムとカウンターの運動のまとめ。ヘイトスピーチのメルクマールは、2013.2.9の新大久保デモ、2013.2.14の鶴橋「大虐殺」街宣。行政のことなかれ主義と政府の無活動に対して、市民の対抗活動が始まった。それだけでは不十分なので法的規制を進めなけらばならない。法的規制を「表現の自由」問題に収れんさせないように、被害の実態調査(とくに沈黙効果でしゃべらない当事者の声を集める)ことが重要。過去のできごとで参考にするのは、スペイン市民戦争の「ノー・パサラン(やつらを通すな)」と、アメリカのリトルロック高校事件。オーストラリアの20年にわたる取り組みの末の規制法の制定など。

ja.wikipedia.org

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(2013/9/8の新大久保ヘイトデモ。路上の座り込み。シットインは路上の民主主義表現のひとつですが、けがや逮捕などの危険があります。)

 

言論を抑圧する「言論」に対して―ヘイトスピーチを被害者の立場から考える/李春熙 ・・・ 2013年ニコンサロンでの「慰安婦」写真展が中止になったり、仮処分で開催されたところに在特会が押し掛けたという事件。レイシズム、排外主義の声が企業に届いて安易なことなかれ主義で屈してしまう(注: 企業もレイシズムや排外主義に鈍感で、ヘイト商品を販売するケースも多々ある)。ヘイトスピーチには「言論には言論で」という意見もあるが、それは強い個人(立場)の考え。被害を受けた人にはそういいだしにくい状況がある。被害(とりわけ心の)はマジョリティのカウンターで中和されたり回復できるわけではない。少なくとも、被害を受けた人が声を上げるときのサポートが必要。アメリカでは喧嘩言葉(fighting words)とされる保護に値しない発言は表現の自由の範疇にはいらないという社会的合意があるので、日本でもそうしたい。しかし日本は国際条約を軽視するので、規制法の制定どころか実態調査すら行われていない。

 

社会の側から排外デモに抗議する!/安田浩一/金展克 ・・・ 2013年上半期の様子。SNSで起きていたことのまとめをみると、何が起き、何が議論されていたかが臨場感あふれてわかるので、参照してください。
(以下のリンク先には、ヘイトスピーチが含まれます。閲覧注意)
2013年1月12日新大久保反韓デモに批判多数「同じ日本人として恥ずかしい」

togetter.com


2013年1月12日在特会ネット右翼による反韓デモヘイトスピーチ に対する 女子の反応

matome.naver.jp


2013年1月30日「レイシストをしばき隊」呼びかけへの反応

togetter.com


2013年2月17日にあった反韓デモに対する意思表示の行動についてのツイート

togetter.com


【第2部】中学生の「鶴橋大虐殺」宣言に喝采を送る自称愛国日本人の絶望ヘイト街宣(13・2・24)

togetter.com


 このようなアクションのあと、同年3月31日、6月30日、9月8日の新大久保嫌韓デモに対してカウンターが最大2000-3000人集まり、現在までのカウンターの方法が定まります。反レイシズムのカウンターはビジョンやミッションを共有する組織活動ではないです。理念に賛同する個人の集まりです。


 この特集は2013年9月現在までの状況をまとめている。その後も状況は常に動いているので、SNSやネットなどでフォローすることを希望。