【2016/4/19】 参院法務委員会 ヘイトスピーチ対策の与党案の質疑(仁比、小川、有田議員)聞き取り

10:00~11:00

以下敬称略、役職略

魚住委員長「法務省人権擁護局2名の意見を聴取する。本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案の趣旨説明から」

矢倉「趣旨説明(略)」
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/190/pdf/t071900061900.pdf

仁比「与党案の審議をすることになった。これは非差別者の取り組みによるもの。大きな意義がある。今日は与党案の意味するものを確認する。法案にある規定にした理由」

西田「表現の自由を守らなければならないため、このような規定にした。表現行為の萎縮行為を招くことになるので、罰則などは入れていない。法律でメッセージを発信することに意義がある。警察などの公権力が寄生するのではなく、国民の啓発によりヘイトスピーチ根絶を目指す。地方自治体に努力義務が書かれることになる。禁止規定がないからといって、ヘイトスピーチに反対していないわけではない」

仁比「禁止規定がないことに当事者団体から危惧が上がっている。深い失望感を感じている。禁止規定がないのに何をもって違法とする言動であるかをどう判断するのか」

矢倉「規制となるとどこが外縁になるかは規定が難しい。」

仁比「提案者は提議の明確性が重要であるといっているが、外縁を明確にできれば違法であると宣言できる、法で定めるべきであると考えているのか」
西田「法の核心部分。明確に定義して国が認定することはできないというのが与党の考え。司法の場で判断されるべき。戦前の治安維持法と同じように、行き過ぎ・圧力になりうる。ヘイトかどうかの微妙な部分に国が関与するのは好ましくない。国は内心・表現の自由に踏み込むべきではない。法の意義は理念を国民が共有し、行政が判断するときの指針となる。デモ禁止が起きたとき、裁判になることも考えられる。判断は司法で」

仁比「国によって表現内心の自由が侵された歴史があり、現在ので国の人権侵害の例が後をたたない。民事裁判や行政処分の判断基準になると西田はいっているが、『ヘイトスピーチは在ってはならない、許されない』とは別の書き方はあるのではないか」

矢倉「不特定人に対する規制であるので、理念としてあらわしていれば、違法判断に影響をあたえることができる。『してはならない』という表現にすることもできるが、憲法の自由に対する規制になりかねない。実効性を確保するためには、国民が主体であるとするのがよいと考えた」

仁比「大阪市条例では具体的に3つ定義をあげている。
http://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000339043.html
よく理科できる内容と思うがどうか」

矢倉「大阪市条例には効果を見なければならない。概念の出発点が違う」

仁比「国民にこれはしてはならない、違法であると伝えることを行うのであれば、外縁を示すことは重要」

西田「外縁を明確にすると別の問題が出てくる。外縁の外の言葉はヘイトスピーチではないというお墨付きを与えることになる。現場や映像を見てヘイトスピーチは断じて許されるものではない。彼ら(ヘイトスピーチをしている人)も挑戦してくるかもしれない。その場合には裁判で決めることになるのがよい。彼らにヘイトスピーチが恥ずかしい行為であると認識させないとヘイトスピーチは根絶しない。当事者に聞くと減ってきたといっていた。しかし21世紀に出てきた。啓発が重要。それ以外に根絶はできないと考える」

仁比「定義にかかわる質問を3つ。本邦外出身者と内外をわけたのは人種差別条約と一致しているのか。もっぱら適法に居住する者とあるが、在留の正当性が保留されているもの、アイヌ民族には適用されるのか。地域社会から排除するとあるが、集住地域ではないところで発せられる言動はこれに入るのか」

西田「在日韓国朝鮮人がターゲットになっているという事実があるので本邦外とした。アイヌ差別は確認中なので入っていないが、アイヌ差別が許されると考えているわけではない。不法滞在者入管法の適用、この法律の対象外。ただし彼らへのヘイトスピーチを容認するものではない。難民は対象に入る。」

矢倉「集住地域以外での言動は前後の文脈で判断するが、銀座などの事例を見れば法の対象になる」



小川「3条に努力するとあるが、努力するつもりのない人にはどのような効果があるか」

矢倉「そういう人が出ないようにするのがこの法の理念。これまで被害を受けていた人が声を出せるようになったので、努力するつもりのない人も巻き込める

小川「納得できない。法律の効果として、彼らに何ができるかを聞いている」

西田「強制することが戦前のように国家が個人の自由を侵害することになる。これでできるようにすると、ほかの事案でも国家が個人に介入できるようになる」

小川「まったく理解できない。私はそのような人にはこの法律には効果がないと思っている。今でもそういう人がヘイトデモをやっている。この法律ではヘイトデモはやまない」

西田「この法律ができても、そういう人は挑戦してくる、ヘイトを止めない。しかし法律ができることで、国民の姿勢ができれば、行政が判断できるようになる。裁判になったときに判断基準ができる。裁判の事例が積み重なることで、ヘイトデモができないようになっていく。司法の手続きを経ることが大事。」

小川「まったく理解できない。行政は何らかの判断をする基準になるのか。この法律を根拠に行政はヘイトデモの許可を取り消すことができるのか」

矢倉「われわれの見てきたヘイトデモは止めるべきだと思うが、理念法に含めない。行政側は判断すべきではない」

小川「この法律を根拠に行政はヘイトデモの許可をださないことにはできないんでしょう。どうなんですか」

西田「警察側が答弁すべき。道路使用許可を出さない根拠にはならない。ほかの法律を解釈する指針となる。合わせ技で抑止力が発揮できる」

小川「法律の提案者が法律の効果を答弁できないのはおかしい。公安委員長は不許可にする根拠となる法律ができないからヘイトデモを不許可にできない。この法律は根拠にならない。ヘイトデモをやっている人は今後もやる。それを抑止することがこの法律ではできない」

矢倉「他の法律を適用するときの指針としてこの法律は斟酌される。これだけを根拠にして禁止することはできない」



有田「4/8に提出した後、民団ほか10の団体がコメントを出している。読んでいるか。理解の状況を説明せよ」

西田&矢倉「コメントがあるのは知っているが、詳細は把握していない」

有田「日本のヘイト団体は与党案を歓迎しているがしっているか」

西田&矢倉「知っているが詳細は知らない」

有田「4/17岡山のヘイトデモでは、やつらは適法であるといっていて、中身はヘイトスピーチそのもの。ナチス礼賛者やヘイトスピーカーはこの法律が自分らの言動がヘイトスピーチに当たらないお墨付きといっている。この状況をどう思うか」

西田「吐き気がするほど恥ずかしい言動。彼ら(ナチス礼賛者やヘイトスピーカー)にお墨付きを与えるものではない。理念を掲げているからこそ、ヘイトに限定を与えないものだと考える」

有田「2008年以降在特会などの行動の端緒はフィリピン人の排除デモ。これは差別煽動に当たらないことになり、差別煽動を推進することにならないか」

西田「特定の人には名誉棄損などが適用。差別煽動をするものは恥ずべき人。でも表現の自由に抵触することは盛り込まない。規定や罰則があることで差別煽動を推進することになる。法権力の暴走をわれわれはもっとも恐れる」

有田「適法に居住するというところ。在日韓国人へのヘイトでは在留資格は無関係ではないか」

西田「適法に居住する在日コリアンは対象になる。しかし適法に住んでいない人へのヘイトスピーチが適法であるわけではない」

有田「適法かどうかをヘイトスピーカーは知らないので、ヘイトをやると思われる。(聞き逃し)」

矢倉「人種差別撤廃条約に違反するという認識はない」

有田「認識を持ってほしい。アイヌ民族差別が無くなっていない。デモもあった。立法事実がある。しかし与党案では対象外になっている、民族規定がないのは人種差別撤廃条約に照らして問題」

西田「この法律は在日コリアンの現状を見て案をつくった。アイヌに関しては今後の議論で検討したい」