2020年もコロナ禍にかかわらず、ヘイト行動がありました。いくつかトピックを上げます。
1.地方のヘイト選挙の明暗
茨城県那珂市市議選に立候補した原田ようこは当選。当選後、日本第一党を離党。(つくば市市議選に立候補を予定していた日本第一党党員は離党後、立候補を辞退しました)
2021年は、地方選挙や衆議院選挙でヘイト候補が出馬することが分かっています。日本第一党は活動の中心を選挙に移しています。カウンター活動が目立たない地方選挙では注意が必要です。
ヘイトスピーチ認定された街宣やデモの主催者や発言者はほぼ同じに人物で、認定後もヘイト行動をやめる気配がありません。大阪府の認定は3年前の街宣であり、即時性にとぼしい。
川崎市のヘイトスピーチ抑止条例はネットのヘイトも取り締まりの対象にして、該当する書き込みをネット事業者に要請しました。しかし事業者は削除に応じません。(一方、ネット事業者のユーザーがヘイトスピーチに当たると報告すると、ときに書き込みや動画は削除されたり、ユーザーアカウントが凍結されたりします。)
3.日本第一党党員の荒巻靖彦が殺人未遂容疑で逮捕
データベースにいれている2012年4月以降のヘイト行動の件数を集計しました。
2020年のヘイト行動のデータは2020年のヘイト行動アーカイブマップをご覧ください。
昨年の集計は数字で見る2019年のヘイト行動をご覧ください。
差別扇動団体が参加した愛知県知事リコール街宣、上記のヘイト候補の個々の選挙活動や辻立、荒巻靖彦応援街宣、ポスティング、講演会などは入っていません。
地域別のヘイト行動件数推移
2012年は4月以降の数字なので少なく見えます。1-3月分の推測値を入れると、350-370件になると思います。
2020年は213件。コロナ禍による緊急事態宣言がでるなどして、街頭行動を宣言するようになったため。とくに日本第一党の本部がデモや街宣をほぼとりやめ「バーチャル街宣」と自称するネット配信に移行したことで、激減しました。
沖縄で件数が急増したのは、市民のカウンター活動によりヘイト街宣が可視化されたためです。図の件数は、実際にレイシストや右翼が現れた回数ですが、市民のカウンターやパトロールは毎週行われています。
種別ごとの件数推移
コロナ禍による緊急事態宣言や外出自粛要請などで街宣もデモも減少しました。この効果は4-6月までで、それ以降は次第に増えています。
「選挙」は日本第一党の桜井誠が出馬した都知事選。路上に出たのは3回だけで、あとは「バーチャル街宣」と自称したネット配信でした(しかし街宣車を駅前に出して、ヘイトスピーチを含む選挙演説を行ったので、一日当たり一件でカウントしています。
地域別の種別ごとの件数推移
関東(東京都と神奈川県に集中)、九州、沖縄が目立ちます。いずれ少数のアクティブな活動家のいるところです。なお、愛知県知事リコール街宣に参加した差別扇動団体の件数を加えると、中部も活発でした。
都道府県別の件数推移
地方自治体でヘイトスピーチ抑止条例を施行、また準備しているところで、「反対」名目のヘイト街宣が目立ちます。罰則のあるところでも、ヘイト街宣は減っていません。認定、氏名など公表という内容ではヘイトスピーチ抑止につながっていません。
在特会を名乗るのは、関東・中部にしかいないので、件数は激減(2019年の関西は東京の在特会の遠征)。
日本第一党が主催者の件数
全国213件の約半数が日本第一党です。
日本第一党と自称していますが、実質は在特会。
このところの傾向は、1.日本第一党が在特会であったことを知らない新規メンバーが増えている、2.北関東の主要メンバーが一斉に離党する一方、荒巻靖彦の殺人未遂事件で除名されたにもかかわらず関西の日本第一党は一緒に活動を継続、3.政治資金収支報告書によると党員数は1000人割れ。
日本第一党の政治資金収支報告書 令和2年11月27日公表(令和元年分 定期公表)
https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/contents/SS20201127/318740.pdf
無告知(ピンポンダッシュ)の件数と割合推移
カウンター活動が活発になった2013年2月以降、無告知が増えてきましたが、2020年には無告知が70%弱になりました。
そのため捕捉できずカウンターのいない街宣他が増えましたが、参加するレイシストの人数は10人未満がほとんどで、聴衆が全くいない状態になっています。最近の傾向は、無告知かつネット中継を行わないものがでてきています。
かつては路上の運動をネット中継して、寄付金を募ったり参加者を増やしたりしていましたが、2020年にはその集客モデルをつかえなくなりました。
市区郡別の件数
これまでは市区郡別の件数はデモだけをみていましたが、デモ件数が激減したので、すべての行動の件数で出すことにしました。
政令指定都市では市ではなく区ごとに集計しました。そのため、下図には区の違う同じ市が繰り返し登場します。
図は過去6年の件数のワースト30。最近の傾向がわからないので、2020年だけの市区郡別件数を作成。
東京都渋谷区は日本第一党の本部のあるところ。都知事選のバーチャル街宣を渋谷区で行われたことにしたので、上位にリストアップされました。
注目すべき都市は神奈川県相模原市。市が準備している罰則付きヘイトスピーチ抑止条例に対して、日本第一党やネトウヨが抗議の街宣や署名活動などを繰り返しています。
最近の状況をみると、レイシストやネトウヨは路上の示威活動をやめるようになっています。カウンターによる抗議活動とコロナ禍への対応でしょう。現在、路上の示威活動に熱心なのは古参の活動家で、新規参加者はほとんどいません。(しかしなお残る路上のレイシストやネトウヨはとても暴力的になっています。上記荒巻靖彦の殺人未遂だけでなく、いくつかの現場で暴力を振るう異例が報告されています。カウンター活動にはこれまで以上の注意が必要です。)
またネットの活動でも、ネット配信でかつてのような視聴者を獲得できなくなり(最大時数十万の視聴者だったのが、最近は3ケタ前半)、SNSでの賛同(RTやいいねの数)も得られなくなっています。
その代わりに、彼らの活動は選挙とロビイングに移行しています。選挙は手軽なヘイトスピーチの場として利用されています。ヘイト議員が誕生すると、ヘイトスピーチや歴史捏造を利用した悪質な質疑が行われます。ときにヘイト議員の要求が通ることがあります(極右教科書が採択されたり、戦時中のヘイトクライム記念碑が撤去されたりするなど)。ロビイングは自治体や公共施設(博物館など)、小中学校に面会を強要するものです。ヘイトスピーチと歴史捏造で担当職員を消耗させます。時に、彼らの要求が通ることがあります(朝鮮学校無償化を取りやめたり、韓国や中国への修学旅行がとりやめになるなど)。どちらも捕捉したり、カウンターアクションをとることが難しい現場です。
集計の元データはこちら。
201223 NO HATE TV 第101回 ヘイトクリスマス2020 最悪ヘイト王は誰だ!?