2025/1/24
さいたま市教委、クルド人女児の小学校通学を阻む 在留資格の喪失を知り「除籍」…政府方針と異なる対応
さいたま市教委が、同市に住むトルコの少数民族クルド人の女児(11)が在留資格を失ったのを機に、通っていた市立小学校から除籍していたことが分かった。文部科学省は、在留資格がなくても住所を確認できる書類があれば義務教育を受けさせるよう自治体に指導しているが、市教委はより厳しい書類の提出を求めており、政府方針に違反する可能性がある。
◆「学校が好きで、通い続けたかった」
女児は、東京新聞の取材に「学校が好きで、通い続けたかった」と話した。支援団体「在日クルド人と共に」は23日、市教委に抗議し、女児の復学を求めた。

学校に通いたいと話す女児=さいたま市で
女児は2022年11月に父母や兄と来日。一家はトルコで迫害されていたとして2023年に難民申請し、特定活動の在留資格を得た。女児も小学校4年生に編入したが、6年生だった昨年7月に難民申請は不認定となり在留資格を喪失。小学校に報告したところ市教委は同9月6日付で除籍した。
◆どんな子どもでも学ぶ権利がある
日本も批准する「子どもの権利条約」は、国籍を問わず教育を受ける権利を明記。このため、文科省は、在留資格がなくても、賃貸契約など住所を確認できる書類があれば学校に受け入れるよう指導している。
市教委は東京新聞の取材に「家族に、日本に居住し続ける意志を証明する書類を求めたが、提出しなかったため」と説明。文科省は「詳細の把握が必要」(国際教育課)と調査する考えを示した。
外国人支援団体「移住連」の高橋徹運営委員は「どんな子どもでも学ぶ権利があるという国際的に広く認められた子どもの権利を侵害することになる」と指摘している。
◆義務教育からこぼれ落ちる外国籍の子どもたち
日本共産党さいたま市議団より。
— 破戒和尚777復活の章 (@0212ytnikusuki) 2025年1月24日
教育委員会問い合わせ。
「記事のとおりのことで入管とのやり取りだけで文科省に確認せず対応してしまい申し訳ないことをしてしまったということで復学を認めるということです。
私からは機械的な対応に苦言を呈しておきました。記者会見で対応を発表するそうです。」 https://t.co/K4mCQNX3Ih
同日
さいたま市在住のクルド人の小6女子児童、在留資格を失ったことを受け公立小学校から除籍 教育委員会が謝罪
さいたま市に住むトルコの少数民族・クルド人の小学6年生の女子児童が、在留資格を失ったことで、公立小学校から除籍されていたことが分かりました。教育委員会は、先ほど会見を開き、謝罪しました。

さいたま市教育委員会 菱沼孝行 学事課長
「学校へ通うことができなかった期間が発生してしまったことに関しては、大変申し訳なく感じています」
さいたま市教育委員会は、クルド人の小学6年生の女子児童が在留資格を失ったことを受け、去年9月、通っていた公立小学校から除籍にしたということです。
文部科学省は在留資格がなくても住所などの居住実態が分かれば、学校が児童を受け入れるよう指導しています。
さいたま市教委は「国の指導について認識不足だった。なるべく早く復学してほしい」として、児童に謝罪しました。
在日クルド人の支援団体によりますと、この児童は「日本の学校は楽しいし、友達もいるから好き」と話しているということで、団体は「国際的に広く認められた子どもの権利を侵害することになる」などと市の対応を批判しています。
〈参考〉2025年1月26日
クルド人ヘイトに使われる20年前の「出稼ぎ報告書」が犯したタブー 「重大な人権侵害」と法務省は批判を浴びた
埼玉県川口市などに暮らすクルド人へのヘイトスピーチが問題となる中、法務省入国管理局(現・出入国在留管理庁)の2004年の報告書が、交流サイト(SNS)などで排斥の新たな材料にされている。報告書は、クルド人の来日目的が出稼ぎであることなどを確認するため、職員がトルコのクルド人の集住地域を現地調査してまとめた。ところが、調査手法に問題があり、当初から内容の信ぴょう性も含め批判されてきた、いわくつきの報告書だった。(池尾伸一、森本智之、飯田克志)
◆「入管が『出稼ぎ』と断定する報告書」


法務省が2004年に作成したトルコ出張調査報告書
「トルコ出張調査報告書(地方視察編)」で、添付資料を含めて約200ページある。昨年11月、産経新聞が「入管が『出稼ぎ』と断定する報告書をまとめていたことが分かった」と報じ、SNSでは「偽装難民」「さっさと強制送還を」などの書き込みが相次いだ。「国会で追及する」と表明する国会議員まで現れた。
報告書によると、当時は、東京と名古屋の地裁で、トルコ国籍のクルド人を難民と認める判決が続き、訴訟対策のためにまとめられた。世界各国で難民認定されたトルコ国籍者は2022年までの10年で約7万4000人に上り、多くのクルド人も含まれているとみられる。一方、日本では裁判で国が負けて2022年に認定した1人を除き、一貫してクルド人を難民と認めていない。
◆迫害から逃げる人の個人情報を迫害側に
2004年6〜7月、職員2人が来日クルド人の主な出身地である南部のガジアンテプ県などの村落を訪ねた。問題はその手法だ。
2人は「ジャンダルマ」と呼ばれる憲兵や警察官など現地の治安当局の協力の下、一緒に難民申請者の実家などを訪ねた。当局には一部の申請者の名前なども照会。迫害から逃げている人の個人情報を迫害する側に伝えたことになる。
こうした情報提供は本人や家族への迫害の恐れを高めるとして国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も原則禁じる。全国難民弁護団連絡会議代表の渡辺彰悟弁護士は「これが横行したら、怖くて誰も難民申請できない。入管は難民認定機関としてあるまじきことをした」と批判する。
◆「来日の理由は、私たちが土地や家や田畑から追い出されたことにあります」
内容にも疑念がある。報告書は、来日理由を問われた複数の人の「お金を稼ぐ」との証言を記載。「出稼ぎ」を印象付けるような書きぶりだが、渡辺氏は「迫害している側を前に『あなたの息子は何のために日本に行ったのか』と問われ、正直に答えられるわけがない」とあきれる。
実際、報告書で「金を稼ぐ。他に何がある」と述べた、ある村長は後に知人への手紙で「来日の理由は、私たちが土地や家や田畑から追い出されたことにあります」と記していたことがクルド人を支援する弁護団の調査で判明した。
報告書では村人と治安当局者を並べて記念写真を撮り、「村人はいずれも笑顔で警察署長と握手しており緊張感はみじんも感じられなかった」と迫害がないことを強調するような記述も複数ある。これについても住人の一人が後日、弁護団に当日の状況を証言した。
◆演出や強要の疑いがある「笑顔」
法務省が2004年に作成したトルコ出張調査報告書
「ジャンダルマが笑うように指示した。私は笑わなかった。銃を持っている人と一緒に立って楽しい人はいない。子どもたちを撮るときは日本人が笑顔を見せるように言った」。友好ムードの裏には演出や強要の疑いがあるのだ。
報告書は直後から批判にさらされた。UNHCR駐日地域事務所(当時)は2005年、「出身国当局とのいかなる情報の共有も控えなければならない」とする意見を公表。日本弁護士連合会も同年、「新たな迫害を生む恐れがあり、重大な人権侵害」と法相あての警告文を出した。
2025/1/29
「報・連・相ができていなかった」 クルド人女児の小学校の除籍問題でさいたま市教育長が謝罪
さいたま市の竹居秀子教育長は28日の定例記者会見で、市内に住むトルコの少数民族クルド人の女児(11)が在留資格を失ったのを機に通っていた市立小学校を除籍された問題について「大変申し訳なく思うし、重く受け止めている」と謝罪した。
