数字で見る2021年のヘイト行動

2021/12/29の#NoHateTV「ヘイト大賞MMXXI」では、ヘイト大賞は長島昭久で、1位入管によるウィシュマさん殺人、2位ウトロ放火、3位Dappiさん、4位武蔵野市住民投票条例反対における自民議員と底辺ネトウヨの連帯、5位DHCとなりました。

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10位までの事件には差別団体がひとつもはいらず、かわりに入管や自民党ヘイトスピーチと、無名の個人によるテロがはいるようになりました。20年代のヘイトの現れ方が10年代と大きく変わったのがわかります。

差別団体の動向は日本のヘイトスピーチ問題のなかでは相対的に小さくなったように見えます。しかし、きちんと押さえておきましょう。

 

1.ヘイト選挙
日本第一党、日本国民党から立候補したものは全員落選しました。しかし自民党や維新の会の候補者で過去にヘイトスピーチを行ってきたものの多くは衆院選で当選しました。詳細はリンク先をご覧ください。

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2.自治体・裁判所によるヘイトスピーチ認定
2021年は、東京都が4件、大阪府が2件を認定しました。地裁立川支部朝鮮大学校非難の街宣禁止を命じる仮処分決定を行いました。自治体によるヘイトスピーチ認定は同じ人物・団体にされていますが、認定後もヘイト行動を続けていて、抑止効果はありません。大阪府の認定は4~5年前の街宣やデモを対象にしていて、結論が出るまで時間がとてもかかっています。

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3.宗教集団へのヘイトスピーチ
2021年の特長は、件数はわずかですが宗教集団へのヘイト行動が行われるようになったことです。多くはイスラム人墓地の建設反対を名目にしています。

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4.自民党や維新の会、極右によるヘイトスピーチ
武蔵野市住民投票条例に反対する記事を産経新聞などが出した後、自民党議員や極右が「反対」の抗議街宣を繰り返し、デマとヘイトスピーチを発しました。

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これに便乗して複数の差別団体が市内でヘイト街宣を繰り返しました。

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5.日本第一党の内紛
北関東の県本部長や桜井誠の側近らが相次いで離党したり、北海道本部と京都府本部が解散したりしています。九州の副党首と福岡県本部長は在任中に起こした公金詐取容疑で逮捕されました。

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しかし2021年の党員数は増加傾向にあり(2020年1000人弱→2021年1500人強)、新参の党員が主にポスティングを地方で行っています。彼らは在特会日本第一党が過去に起こした事件や裁判の敗訴、自治体のヘイトスピーチ認定などをほとんど知らず、すでにデマであることがわかっているデタラメを繰り返し発しています。

6.ヘイトスピーチのターゲットの変更
2021年では、各地で準備されているヘイトスピーチ禁止条例と住民投票条例、愛知トリエンナーレへの「反対」を名目にしたヘイト行動が増えました。あわせて自治体長への誹謗中傷も行われています。在日特権拉致被害者奪還などにかわって人の注目を集めやすいテーマとして地方自治体への嫌がらせや攻撃が目立ちます。
また、関西、中国、九州の元在特会界隈のレイシストが「児童虐待防止」「共同親権」運動に転向しています。家裁や弁護士事務所前で嫌がらせ街宣をしたり、自治体に面会を強要したりしています。

7.#ヘイトパトロール
過去にヘイト街宣が行われた場所に市民が行き、ヘイト街宣が行われないか警戒するヘイトパトロールが行われています。2014~15年ごろに鶴橋で監視する「#鶴橋安寧」が最初ですが、2020年に那覇市で、2021年に川崎市で行われるようになり、2022/1/3現在でも継続されています。ときにネットで発見した無告知街宣に駆け付け抗議し、ヘイトスピーチを無効化しています。

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地域別のヘイト行動件数推移

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2012年は4月以降の数字なので少なく見えます。1-3月分の推測値を入れると、350-370件になると思います。
2021年もコロナ禍による緊急事態宣言や外出制限などがありましたが、関東(特に首都圏)の件数が増えました。また地方や国政の選挙にヘイト候補が立候補したので、そのエリアだけ件数が増えています。

 

種別ごとの件数推移

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デモ件数は微増しました。14件のうち5~6件が無告知ないしそれに準じるもので、レイシストはカウンターを意識していると思います。
選挙は一日当たり1件としました。同じ日に複数個所で「選挙演説」を行っても1件です。

 

地域別の種別ごとの件数推移

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関東(東京都と神奈川県に集中)、九州が目立ちます。いずれ少数のアクティブな活動家のいるところです。ヘイトスピーチ禁止条例の制定が準備されている都市で反対するヘイト行動が増えています。

 

都道府県別の件数推移

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ヘイトスピーチ禁止条例がすでにある、あるいは準備されている東京都と神奈川県に集中しています。SNSでは名古屋市京都市ヘイトスピーチに反対するレイシストの書き込みが増えています。今後のヘイト行動につながるかもしれません。
東京都が増えたのは衆院選や地方選挙の選挙期間前に日本第一党と日本国民党が「周知街宣」をしたため。神奈川県が増えたのは日の丸街宣倶楽部とせと弘幸一派が川崎市内でヘイト街宣を繰り返したためです。

 

日本第一党が主催者の件数

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日本第一党のヘイト行動は相対的に減少しています。内紛などの影響が考えられますが、ポスター貼りやポスティングは活発に行われています(表の数字には入っていません)。運動の主軸を街宣から地道な活動に変えているようです。

 

無告知(ピンポンダッシュ)の件数と割合推移

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レイシストはカウンターを恐れて街宣やデモ、講演会、選挙運動をほとんど告知しなくなりました。それでも、ヘイトパトロールで捕捉されて無効化されています。

 

市区郡別の件数

すべての行動の件数です。政令指定都市では市ではなく区ごとに集計しました。そのため、下図には区の違う同じ市が繰り返し登場します。

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デモの出発地になる公園や大きな鉄道駅があるところが多くなります。

 

2021年だけで見ると順位は変わります。

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川崎駅がある川崎市川崎区がトップです。武蔵野市は11~12月に「住民投票条例反対」街宣がほぼ毎日繰り返されたため。葛飾区、新潟県上越市は地方選挙にヘイト候補の「選挙運動」がありました。

 

集計の元データはこちら。

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2020年のヘイトクライム状況

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