【2019/5/21】(火) 参院法務委員会 有田芳生議員の質疑聞き取り(ヘイトスピーチ解消法の成立から3年)

※ 神戸や岡山のヘイトデモの資料はブログ主が添付したものです。有田議員が法務委員会で配布したものではありません。
 有田議員の質問には、現状を把握するために実際に発せられたヘイトスピーチを読み上げたところがあります。ここでは、そのまま採録しましたので、閲覧の際にはご注意ください。

 

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有田芳生議員「ヘイトスピーチ解消法が本参議院法務委員会で全会一致で可決されたのが、2016年5月12日、3年前でした。それから本会議衆議院に回ってこの法律が公布されたのが6月3日でした。それから3年が経ったんですけれども、大きな前進があると同時に、様々な課題問題点が存在するというのが現実です。
まず人権擁護局長にお聞きをしますけれども、この3年間でどういう成果があったのか、あるいは解決しなければならない課題が具体的にどのように存在するのか、お示しください

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菊池人権擁護局長「いわゆるヘイトスピーチ解消法の成立により、不当な差別的言動に対する国民の関心が高まり、その解消が喫緊の課題であるとの認識が社会の中で共有されつつあると考えております。具体的には当局において作成した「ヘイトスピーチ、許さない」というポスター等の啓発資料が地方公共団体や市民の間でも利用されるなど、ヘイトスピーチの解消に向けた取り組みに対して国民の高い関心が示されております。さらに地方公共団体におけるヘイトスピーチ解消に向けた条例の制定や公の施設の利用許可に関するガイドラインの策定など、ヘイトスピーチの解消に向けた各種取り組みが広がりを見せているものと認識しております。しかし残念ながら依然として本邦外出身者に対する不当な差別的言動がなくなってはいないように思われます。例えば、インターネット上の不当な差別的言動や選挙運動の不当な差別的言動への対応など、取り組むべき課題はなお残されていると認識しております

有田芳生議員「付け加えれば、漫画入りのパンフレットも作製をされています。同時に「ヘイトスピーチ、許さない」というポスターを法務省が作られたが、実際には予算の問題もあるんでしょう。この解消法が施行される直前に岡山で行われた拉致問題を利用したヘイトスピーチデモで、反対する人たちが法務局に行くと「ない」と言われた。予算の範囲で常時あるようにお願いしたい。
3月12日に法務省人権擁護局調査救済課補佐官の名前で全国の法務局や警察庁総務省などに対して事務連絡が発せられております。この内容を端的に伝えていただけますでしょうか。なぜ今年のこの3月12日の段階でこういう事務連絡という間には通達を出されたのか、その2点についてお話しください

菊池人権擁護局長「ご指摘の事務連絡は、不当な差別的言動はそれが選挙運動等として行われたからといって直ちにその言動の平性が否定されるものではないこと。選挙運動等に際し不当な差別的言動その他の言動により人権を侵害されたとする被害申告等があった場合には、その内容対応等を十分吟味して人権侵犯性の有無を総合的かつ適切に判断の上対応するよう、各法務局に対して周知したものでございます。かねてより地方公共団体等から選挙運動政治活動等に際して不当な差別的言動等が行われる場合があるとの指摘がなされていたところでございます。昨10月に開催したヘイトスピーチ対策専門部会において、選挙運動でなされたヘイトスピーチへの対応について国としての考え方を示してほしい旨の意見が地方公共団体から出されていたところでございます。こういった指摘や意見を踏まえ、当局としての考え方を明確にするために事務連絡を出したものでございます。

有田芳生議員「一般的な説明をしていただきました。今年行われた前半後半の統一地方選挙においてヘイトスピーチをこととする政治団体が立候補したし、そこに属していなくてもそれにシンパシーを感じる人物も選挙に立候補した。公職選挙法に守られながら堂々とヘイトスピーチを行うという事態は、危惧されたと同時に実際に行われた。例えば、日本第一党という「存在そのものがヘイトスピーチ、」「差別に寄生している」という指摘が最高裁でも認定をされた桜井誠という人物が責任者の団体がある。また最高顧問にはヒトラー・ナチズムを支援するというような人物が今でも活動している。その日本第一党という団体のやっていることを紹介します。「敵の返り血を浴びることを恐れてはいけません」「命を乞い願う敵に慈悲を与えてはいけません」「日本第一党を国会で多数派にして国家の敵を物理的に日本から消滅させましょう」「日本第一党は戦闘的な愛国政党です」「選挙権のない朝鮮人は日本から出て行け」。

法務省が解消法以降に作られた参考情報によっても明らかなヘイトスピーチというものが撒き散らされてきた。もっとひどいものもありますけれども、時間の関係でそれぐらいに留めておきます。先ほどの問題意識でもって地方選挙に臨まれたわけですが、今回の地方選挙においてヘイトスピーチが行われたという調査をされてたんでしょうか。総括されてますでしょうか

菊池人権擁護局長「今般の統一地方選挙におけるヘイトスピーチの実態について、一般的に申し上げまして選挙運動等としてなされたものであるか否かを問わず、不当な差別的言動の事案については関係機関からの情報提供や市民からの相談等により把握しているところ。今般の統一地方選挙における不当な差別的言動についても、これに関連する相談が市民から法務局に複数寄せられている

有田芳生議員「それが立件に向かう可能性ってのあるんでしょうか

菊池人権擁護局長「現時点においては何とも申し上げたいところでございます

有田芳生議員「結果を公表されるご予定はありますか

菊池人権擁護局長「(結果の公表は)考えたいと思います

有田芳生議員「警察庁の方ではその法務省の対応についてどのように周知されたんでしょうか

田中警察庁審議官「本年3月28日付けで警察庁から各都道府県警察に当てた事務連絡におきましては、不当な差別的言動に関しまして選挙運動等として行ったものであっても、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づいて適切に対処することについて改めて確認して徹底している。都道府県警察におきまして、選挙違反の取り締まり担当者が集まった会議の場を通じて、選挙違反取り締まりをやってる警察本部の各部署や各警察署に対し周知徹底を図った

有田芳生議員「そういう説明を行った内容が現場の警備の警察官にも周知されたんでしょうか

田中警察庁審議官「ただいまは、選挙違反取り締まりをやっている警察本部の各部署に対しというふうに申し上げましたけれども、これは警察の刑事部に限らない。全部に対する指示でございます

有田芳生議員「総務省はその通達についてどのように受け止められましたでしょうか

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吉川総務省審議官「ご指摘の事務連絡は参考として送付を受けた。しかしながら統一選挙が行われている時期でございまして、選挙管理委員会があり、候補者等に対してヘイトスピーチの解消に係る啓発を行うことは、慎重に対応する必要があると考えましたところから、特段の対応は致しておりません

有田芳生議員「そういう返事をこの間3回お聞きをしておりますけれども、被害者の立場に立てば、表現の自由があるんだから選挙においては選管としてもどうしようもないんだという立場から、法務省のこれまで到達した水準に少しでも近づいて欲しいんですよ。
例えば候補者の説明会において、法務省の「ヘイトスピーチ、許さない」というポスターや説明文、パンフレットなどを選挙の候補者の説明会で配られてもおかしくないと思う。それが全く表現の自由という言葉で止まったまま。これからも(選挙に候補者を立てることを)行ってきますよ、(ヘイトスピーチをする人である)彼らは。
実際にお願いしたいのは、被害者の声、思い、悩み、苦しみっていうの直接聞く努力をしてもらうこと。この法務委員会で解消法が成立した。当時の人権擁護局長は土曜日日曜日休みを使って、ヘイトスピーチが行われてるようなデモや集会に行って、自分の目で耳で経験をした。この法務委員会で川崎市桜本という在日コリアンの集住地区に視察に行った時も、人権擁護局長は同席をされて、被害者のおばあちゃんたちの声を直接肌身で感じてる。だからこういう法律は絶対必要なんだっていう認識をしたんですよ。法務省はそれから3年間努力してくださってるんですよ。現場の「ヘイトスピーチ、許さない」という市民の戦いも含めて。だが、選管の方々はそういう実態を残念ながらご存知ないんだという風に思う。
八王子市の選管から法務省に、選挙においてそういう候補者が出る可能性が高いということで問い合わせきませんでしたか。どのように答えられましたでしょうか

菊池人権擁護局長「一部の地方公共団体から立候補者説明会で配りたいとして、法務省啓発資料の提供要請があり、要請に応じて、提供したことはございました

有田芳生議員「総務省もそういう舞台があるんですよ。だからそうやって法務省も提供されてるわけです。実際八王子の選管で配られたかどうか確認されてないでしょうけれども、そういう努力をやって行くのが、この3年間の到達点に少しでも近づくことだと思うんです。ですからそういう検討を内部でしていただけませんでしょうか。総務省にお尋ねします

吉川総務相審議官「ヘイトスピーチ解消法の趣旨は重要であると認識しているところでございます。一方で、選挙管理委員会自らが選挙を行う際に候補者に対してヘイトスピーチの解消に係る啓発活動を行うことは、候補者の政見等についての介入干渉と判断される恐れがある、また選挙を行う際でなくても、そのような認識をもたれる恐れもある。慎重に考えざるを得ないことをご理解頂きたいと存じます。
なお選挙に全く近接しない時期に、ヘイトスピーチ解消法の趣旨を踏まえ、法務省が行う啓発活動の内容一般的に周知することなどについては、選挙の結果に影響を与える恐れや候補者の政見等についての介入干渉にあたる恐れがないなど、選挙の自由公正が阻害されない限り、させても支障ないものと考えております

有田芳生議員「理念法であっても具体的に何ができるのかを検討してください。八王子ではそういう努力してるんです。他だって困ってるから法務省に問い合わせがある。「ヘイトスピーチ許さない」という立場で最高裁だってもう何回も決定を出してる。そういう状況の下で新しい取り組みをするってのが大事だ。くり返し言ってもしょうがないですから、お願いをしておきます
地方自治体で条例の制定の動きがあり、ガイドラインの作成などのお話がありました。例えば京都市京都市井手町宇治市でもヘイトスピーチ防止のためのガイドラインが出ております。それを読むと具体的に法務省の参考情報に基づいて何がヘイトスピーチなのかということを、全国各地の地方自治体でガイドラインを作る努力で明らかにされてる。あるいは川崎市は条例を今準備をしておりますけれども、ずっとこの3年間の努力の中で、罰則も入れた条例を、表現の自由との関わりを配慮しながら進めてる。罰則付きの条例が今川崎ではできようとしてる。そういう努力に呼応したい。
全国各地で今でも行われてるヘイトスピーチのデモ集会に対して、一般市民がヘイトスピーチ解消法の趣旨に基づいて抗議行動・反対運動を行ってる。5月12日も川崎の駅前であった。私もその場で見た。警察の警備体制は柵を置いてトラブルがないように努力をされてるとよく分かりましたが、100人を超える警察官がいて、市民から見たら「何だこのような状況は」と思われてしまう。あまりにも警察官の数が多すぎる。そこで誤解されないように努力していただきたいんです
皆さん、資料を是非見ていただきたい。ヘイトスピーチの現場です。左、みてください。去年の6月3日神戸で拉致問題を利用したヘイトスピーチです。警察官のデモに見られてもしょうがない実態がある。こういうことをやはり改善していただきたい

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東京の銀座でも新宿でも、同じような光景が見られる。だから歩いてる人や外国人からは、ヘイトスピーチが警察官に守られて白昼堂々と行われてるとしか見えない。
新宿が特にひどい。ヘイトスピーチやる人たちがデモをやる。それに反対する人たちが歩道を渡ろうとすると止められる。私もこの場にいましたけれども30分ぐらい止めることがあった。歯医者行けなくなると警察官に言ったってどうしてもらえない。犬の散歩に行こうとする人もすぐそこにある公園に散歩に行けない。
ヘイトスピーチ解消法の成立の直前に岡山で拉致問題を利用したデモがありました。そこでは岡山県警がものすごくスマートな警備やってました。ヘイトスピーチする人を交互に警察官が見ながら配置をとる。そして女性がちょっと危ないなっていう時には、女性警官がその子達について行く。

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だけど新宿も銀座も、女性達に体の大きな警官がやめなさいって言うと萎縮する。こういうことを改善して頂きたいと、警察にお願いしておきたいと思います。いかがですか

田中警察庁審議官「警察におきましてはデモの警備に際しては現場における混乱交通の危険防止のため、必要な体制を構築し中立性公平性を念頭において活動実施しております。具体的な警備のあり方については、デモの状況その時々の情勢様々な地理的な事情などを踏まえて判断する。各都道府県警察はデモの状況等を踏まえ、安全の確保の観点から警備活動を実施することとしております

有田芳生議員「東京オリンピックパラリンピックを目の前にして、銀座であるいは新宿で外国人が多くいるところで、ヘイトスピーチの行為が行われている。政府一丸となって対策をさらにとっていただきたいとお願いしまして、質問を終わります