2019/6/25
「ヘイトスピーチなどの差別的な言動を禁じるため、全国で初めてとなる罰則付きの条例の制定を目指している川崎市は、市の勧告や命令に従わず民族差別的な言動を繰り返した場合、50万円以下の罰金を科すことなどを盛り込んだ条例の素案を示しました。/ 川崎市は、ヘイトスピーチと呼ばれる差別的な言動など、人種や国籍、障害や性的指向などを理由としたあらゆる差別を禁じるため、罰則規定を盛り込んだ条例を制定する方針を明らかにしています。/ 24日は市議会の委員会で、罰則の詳細などを盛り込んだ条例の素案が初めて示されました。/ それによりますと素案では、ヘイトスピーチ解消法が規定する民族差別的な言動を市内の道路や公園など公共の場所で、拡声機の使用やビラの配布、看板の掲示などの手段で行うことを禁じています。/ これに違反すると「勧告」や「命令」を行い、それでも従わず3度目の違反があれば、個人の氏名や団体の名称、住所などを公表するほか、警察や検察に刑事告発して50万円以下の罰金を科すとしています。/ さらに、運用にあたっては「表現の自由」に配慮しつつ、恣意的(しいてき)な判断を防ぐために随時、学識経験者らでつくる審査会の意見を聞くことにしています。/ このほか、罰則の対象にはならないものの、インターネット上でも川崎市や市民に関わる民族差別的な言動と判断されれば、プロバイダーへの削除要請などの措置を取り、事案を公表するとしています。/ 川崎市は来月8日からパブリックコメントを受け付け、12月の議会に条例案を提出する方針で、市によりますと成立すれば、差別的言動を禁じる条例に全国で初めて罰則規定が設けられるということです。
罰則規定を盛り込んだ条例の内容は
川崎市が制定を目指す条例の特徴は、ヘイトスピーチの解消に向けた取り組みの実効性を確保するため、罰則規定を盛り込んだことです。/ 条例が禁じるのは、人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害など、あらゆる不当な差別が対象です。/ このうち罰則の対象となるのは、3年前に施行されたヘイトスピーチ解消法が規定する「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」です。/ 具体的には、特定の民族に対し「○○人は出ていけ」などと国外へ退去させることをあおり社会から排除するものや、危害を加えることをあおるもの、著しく見下したりする言動を対象としています。/ そのうえで、市では憲法が定める「表現の自由」に配慮し、罰則の対象を限定しています。/ 対象となる場所は、市内の道路や公園、それに駅といった公共の場所としています。/ その手段についても、拡声機の使用やプラカードの掲示、ビラの配布、それに多くの人が一斉に大声で連呼することなどに限定しています。/ こうした要件に当てはまると判断された場合、まず、市長による「勧告」が出され、それでも同様の行為が行われると「命令」が出されます。/ 市長の命令に従わず、3回目の違反行為が繰り返された場合は、違反を行った人物や団体に通知をしたうえで、その氏名や団体の名称、住所などを公表することにしています。/ 併せて、川崎市は条例違反として警察や検察に刑事告発をし、司法機関の判断により50万円以下の罰金が科せられるということです。/ 川崎市では表現の自由への配慮や恣意的な判断を防ぐため、「勧告」や「命令」を出す前には、学識経験者などからなる市が委嘱した審査会で意見を聞くことにしています。/ また、今回の罰則の対象とはなっていないインターネット上での差別的言動については、審査会の意見を踏まえ、プロバイダーに書き込みの削除要請を行ったり、事案の内容を公表したりすることにしています。
川崎市「差別を許さないという思い」
川崎市の人権・男女共同参画室の池之上健一室長は「条例の素案の策定にあたっては、差別を受けた当事者の方々からも多くの意見を聞き、市としてできることを検討してきた。川崎市においては差別を許さないという思いを持っているので、この条例が不当な差別を根絶するための一つの柱になってほしい」と話していました。
専門家「国に先駆けて罰則は意義ある」
川崎市の罰則付きの条例の素案について、ヘイトスピーチの問題に詳しい師岡康子弁護士は「ヘイトスピーチ解消法には禁止規定や罰則規定がなく『許されない』と書いてあっても実効性の面で課題になっていた。罰則は、繰り返し悪質なヘイトスピーチをする人に対し一定の歯止めとなり、国に先駆けて罰則を設けることには意義がある」と評価しました。/ また、憲法が保障する「表現の自由」の観点から罰則規定を懸念する指摘も出ていることについて「素案では行政機関が内容を事後的にチェックしたうえで専門家の意見を聞き、段階を踏んで告発する仕組みになっており、告発する対象もかなり絞られているため、表現の自由の確保と適正な法手続きの両面から考えられていると思う」と話していました。
在日コリアン3世「決意感じる画期的な判断」
条例の素案の公表を受け、川崎市に住む在日コリアン3世の崔江以子(チェ・カンイジャ)さんは「ヘイトスピーチ解消法にない禁止と罰則が示され、川崎市の決意を感じる画期的な判断だと思います。現行法では差別的言動を止められない現実が川崎にはあるので、この条例で変えていってほしいと思います」と話していました。/ また、インターネット上でのヘイトスピーチ対策について、みずからも被害を受けた立場として「一度世間にさらされたら消えませんし、個人の力だけで対処するのは限界があります。市が有効な策を取り、実効性が示されることに期待したいと思います」と話していました。」
「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)について
この度、「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)を公表いたしました。/ 詳細は、添付の資料を御覧ください。/ 資料の概要は次のとおりです。
(資料1ページ)
「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)について
1 条例制定の背景
2 川崎市人権施策推進協議会からの提言について
3 条例制定について
(資料2~3ページ)
「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)の内容
1 前文
2 総則
3 不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進
4 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進
5 その他(雑則、罰則、施行期日等)
(資料3ページ)
今後のスケジュール
http://www.city.kawasaki.jp/250/cmsfiles/contents/0000108/108168/20190624soan_hp.pdf
画像
ヘイト禁止、各地に広がる 国立・世田谷「差別禁止」/都「五輪理念を実現」
「川崎市が、ヘイトスピーチを繰り返す者に刑事罰を科す方針を示した。行政罰としての過料を命じる条例はこれまでもあったが、刑事罰を盛り込んだ案は初めてだという。国や自治体にヘイトスピーチ解消の取り組みを求める対策法が2016年に施行され、各地での動きが広がりつつある。」
2019/10/5
「差別根絶目指す」 ヘイト罰則条例巡り川崎市長、強調
神奈川新聞 2019年10月05日 05:00
「川崎市の福田紀彦市長は4日の市議会決算特別委員会で、ヘイトスピーチに罰則を設けた条例の素案について「差別の根絶を目指し、地域の実情を踏まえた」と述べ、条例制定の必要性を説いた。自民党の末永直氏による総括質疑に答弁した。/ 条例の必要性や表現の自由との兼ね合いを問われた福田市長は「この条例は人種や性別、性的指向、障害などを理由にしたあらゆる差別を許さないとの決意をもって差別の根絶を目指すもの」と趣旨を説明した。/ 50万円以下の罰金という刑事規制に関しては、川崎区桜本の在日コリアン住民の殺害を呼び掛けるというヘイトデモの重大性を根拠として、「ヘイトスピーチ解消法の立法事実にもなった。今も同じような行為が再現されかねない事象が継続している」と強調。確信的に差別的言動を繰り返す人物や団体に対して「表現の自由に配慮し、要件を限定した上で刑罰に関する規定を設ける」とし、勧告・命令などの手続きを踏む川崎方式への理解を求めた。/ 市内では2013年5月から差別主義者によるデモが14回繰り返され、今年8月には極右政治団体「日本第一党」が6回目となる街宣をJR川崎駅前で実行。「在日のならず者集団をまちから一掃しなければならない」などと迫害をあおった。第一党は19日にも駅前で街宣を予告している。/ 市はこれまで「教育や啓発の限界を超えている」と罰則条例の必要性を答弁しており、市人権・男女共同参画室は神奈川新聞社の取材に、「駅前で続けられている街宣活動の状況から、ヘイトデモが再び行われる火種は残っていると判断している」と説明している。」
<参考> 川崎市内で行われた差別主義者によるデモの一覧(2019/10/5現在)
2019/10/28
ヘイトスピーチ対策「より実効性ある内容に」川崎市に要請書
2019年10月28日 18時23分
「全国で初めて川崎市がまとめたヘイトスピーチなどの差別的な言動を禁じるための刑事罰を盛り込んだ条例の素案について28日、弁護士らが規制対象の拡大や刑事罰の乱用を防ぐ仕組みの導入など、より実効性のある内容にするよう求める要請書を市に提出しました。/ 川崎市は、ことし6月、ヘイトスピーチなど民族差別的な言動を3回繰り返した場合、50万円以下の罰金を科すことなどを盛り込んだ条例の素案を示し、12月の市議会に条例案を提出することを目指しています。/ この素案について、ヘイトスピーチの問題に詳しい弁護士らは、より実効性のある内容にするよう求める福田紀彦市長と市議会宛ての要請書を提出しました。/ この中では規制の対象を「特定の国の出身者などを著しく侮蔑するもの」としている点について、凶悪事件や災害の際に外国人をめぐるデマが流れる現状を踏まえ「誹謗中傷して憎悪をあおるもの」も加えるべきだとしています。/ また、刑事罰の適用の乱用を防ぐ仕組みとして、市長が捜査機関に告発することを条件にするなど12の項目を求めています。/ 要請書を提出した師岡康子弁護士は「市の姿勢は評価しているが、人権が尊重される多文化共生社会を作るため、ぜひ取り入れてほしい」と話しています。」
2019/11/8
ヘイトスピーチ禁止の条例案 在日コリアン女性が要請書 川崎 2019年11月8日 18時39分
「川崎市がヘイトスピーチなどの差別的な言動を禁止するため、罰則付きの条例の制定を目指す中、8日、市内在住の在日コリアンの女性らが市役所を訪れ、より実効性のある条例を求め、要請書を提出しました。/ 川崎市はことし6月、ヘイトスピーチなど民族差別的な言動を3回繰り返した場合、50万円以下の罰金を科すことなどを盛り込んだ条例の素案をまとめていて、来月の市議会に条例案として提出することを目指しています。/ 8日は市内在住の在日コリアンの女性や支援者が市役所や市議会を訪れ、条例案をより実効性のある内容にまとめ、全会一致での可決を求める要請書を手渡しました。/ この中では、インターネット上のヘイトスピーチは市が削除要請を行うといった具体的な措置の明記や、条例制定後も規制の対象や方法が適切か検証することを定める条項の追加などを求めています。/ 要請書を提出した1人で、川崎市に50年住んでいる在日コリアン二世の石日分(ソク・イルブン)さん(88)は、「川崎では地域に溶け込んで生きてきたので、今後もヘイトスピーチは絶対に止めなくてはいけないと感じています。条例によりみんなが仲よく暮らそうという考えを広めていかなくてはいけない」と話していました。」
2019/11/14 朝日新聞京都版
2019/11/14
「ヘイトスピーチなどの差別的な言動を禁止するため、川崎市が制定を目指している罰則付きの条例の素案について、市はパブリックコメントの結果を踏まえ、禁止する内容や期間などを一部修正して条例案に反映させる方針を明らかにしました。/ 川崎市はことし6月、ヘイトスピーチなど民族差別的な言動を3回繰り返した場合、50万円以下の罰金を科すことなどを盛り込んだ条例の素案をまとめ、今月下旬の市議会で条例案の提出を目指しています。/ 14日は市議会の委員会で、素案に対するパブリックコメントの結果が公表され、市の担当者が、寄せられた1万8000件あまりのうち6割以上が賛成意見だった一方、「条件が不明確だ」という指摘があったとして、一部修正したと報告しました。/ 具体的には、禁止する差別的言動として「日本国外への退去」をあおる行為としていたところを「居住する地域からの退去」とし、国だけでなく自治体や地域も含むよう変更された一方、「多数の者が一斉に大声で連呼する」行為は「多数」や「大声」の定義が難しいという理由で削除されました。/ また、差別的言動に対する「勧告」や「命令」の有効期間を「6か月間」と明記し、緊急を要する場合は専門家の審査会に意見を聞かなくても市長が「勧告」や「命令」を出来るとした一方、氏名や団体名などを公表する前には、審査会の意見を聞くよう修正されました。/ 条例案は15日公表される予定です。」
2019/11/15
川崎市 ヘイトスピーチ禁じる条例案を公表 2019年11月15日 18時20分
ヘイトスピーチなどの差別的言動を禁じるため、全国で初めて罰則付きの条例の制定を目指す川崎市は、市の勧告や命令に従わず民族差別的な言動を繰り返した場合、最高で50万円の罰金を科すことなどを盛り込んだ条例案を、15日公表しました。
川崎市は、ことし6月にヘイトスピーチなどの差別的言動を禁じる条例の素案を示し、パブリックコメントの結果などを踏まえて修正したうえで、15日条例案を公表しました。
この中では、公共の場所での、日本以外の国や地域の出身者への差別的な言動を禁じていて、具体的には、住んでいる地域からの退去をあおることや、身体や自由、財産などに危害を加えると告知すること、それに人以外のものに例えるなどの著しい侮辱を禁止しています。
これに違反すると、市長が差別的言動をしないよう「勧告」や「命令」を行い、それでも従わず、命令から6か月以内に3回目の違反をした場合、個人の氏名や団体の名称、住所などを公表するほか、刑事告発して50万円以下の罰金を科すとしています。
素案では「勧告」や「命令」の前に専門家の審査会に意見を聞くとしていましたが、条例案では緊急時は必ずしも必要ないとされた一方、「公表」の前には審査会に聞くよう修正され、市では、迅速な対応と恣意的(しいてき)な判断の防止の両立を目指したとしています。
条例案は、今月下旬に開かれる市議会に提出される予定です。
最高50万円の罰金盛り込む
川崎市が15日公表した、ヘイトスピーチなど差別的な言動を禁じるための罰則付きの条例案、その詳しい内容です。
条例案で禁じているのは、市内の道路や公園などの公共の場所において、「日本以外の国や地域の出身者に対する差別的言動」を行うことです。
具体的な内容は3つで、1つ目は「居住する地域からの退去を扇動・告知する」行為です。素案では「国外への退去」としていましたが、条例案では住んでいる自治体や地域も含むよう変更されました。
2つ目は「生命、身体、自由、名誉、または財産に危害を加えることを扇動・告知する」行為。3つ目は「人以外のものに例えるなど、著しく侮辱する」行為です。
専門家などからは凶悪事件や災害の際に外国人をめぐるデマが流れる現状を踏まえ、「誹謗中傷して憎悪をあおる」行為も加えるべきとする要望が出されていましたが、これは盛り込まれませんでした。
具体的な手段としては「拡声機の使用」、「看板やプラカードなどの掲示」、「ビラやパンフレットなどの配布」が明記されました。
一方、素案にあった「多数の者が一斉に大声で連呼する」行為は、「多数」や「大声」の定義が難しいとして条例案では削除されました。
これに違反すると、市長がこれらの行為を6か月間行ってはならないと「勧告」し、期間内に再び違反行為があれば、次は「命令」します。
それでも従わず、命令から6か月以内に3回目の違反が行われた場合、個人の氏名や団体の名称、住所などを公表するほか、刑事告発して50万円以下の罰金を科すとしています。恣意的な判断を防ぐため、公表の前には、専門家の審査会に意見を聞く流れになっています。
一方、具体的な対策を求める声が多かったインターネット上のヘイトスピーチについては、事案に応じて運用するとして「拡散防止のために必要な措置を講ずる」という表現にとどめられました。
福田市長「全会一致の可決を目指す」
条例案をうけて川崎市の福田紀彦市長は「不当な差別のない町づくりに向け、条例の制定が大きなきっかけになると思う。市民の総意で条例を成立させるため、全会一致での可決を目指し議会への説明に努めたい」と話していました。
条例案に対する川崎市民の反応
ヘイトスピーチなどの差別的な言動を禁止するための川崎市の条例案について、市民からは早期の制定を望む声がある一方で、条例の効果を疑問視する声も聞かれました。
勧告、命令 6カ月有効 川崎市が修正点報告 ヘイトスピーチ
政治行政 神奈川新聞 2019年11月15日 05:00
「川崎市は14日の市議会文教常任委員会で、ヘイトスピーチを繰り返した者に50万円以下の罰金を科す「差別のない人権尊重のまちづくり条例」の素案について、市民意見を反映させた修正点を報告した。違反者に対して市長が発する勧告と命令に関して「有効期間を明確にすべきだ」との意見が寄せられたことから、市は6カ月の有効期間を設定することを決めた。市は12月定例会に条例案を提出し、成立を目指す。/ 素案では、違反者に対して市長はやめるよう勧告、命令を出し、それでも続けられた場合に氏名や団体名を公表して検察庁に刑事告発するとされている。従来は勧告と命令の際に学識経験者らでつくる「差別防止対策等審査会」の意見を聴くこととされたが、今回の修正では氏名公表前にも同審査会の意見を聴く手順が新たに加えられた。/ 規制対象となる差別的言動の構成要件を巡っては、従来の素案にあった「多数の者が一斉に大声で連呼する」との記載を削除。「多数、大声といった定義が難しく、要件の明確化の観点から外すことにした」と理由を説明した。/ また「特定国出身者などを著しく侮蔑する」との要件についても「不明確」との意見があったため、「人以外のものにたとえるなど、著しく侮辱」と文言を変えて明確化を図った。/ 委員会では委員から、6月の素案発表以降に市内部でなされた議論について質問があり、人権・男女共同参画室の池之上健一室長は「人権侵害を受けている人が安心して生活できることが何より重要。ヘイトスピーチをなくす実効性を持たせるために、構成要件をどれだけ明確にできるかを議論してきた」と述べた。/ 市によると、市民意見数は過去最多の1万8243通(意見総数2万6514件)で、素案への賛成は約64%、反対は約24%、その他10%だった。「表現の自由」の侵害への懸念を指摘する意見も400件ほどあったが、市は「一定の構成要件を設けて対象を限定し、今回の修正でさらに明確化を図った」とし、問題はないとの見解を示した。」
2019/11/25
ヘイトスピーチなどに刑事罰 全国初の条例案提出 川崎市議会 2019年11月25日 15時36分
「ヘイトスピーチなどの民族差別的な言動を繰り返した場合、刑事罰を科すことを盛り込んだ全国初の条例案が25日開会した川崎市議会に提出されました。/ 川崎市議会に提出されたのは、人種や国籍、障害や性的指向などを理由としたあらゆる不当な差別の解消を目指す条例案です。/ この中では、ヘイトスピーチなど民族差別的な言動を市の「勧告」や「命令」に従わず3回繰り返した場合、最高で50万円の罰金を科すことなどが盛り込まれています。/ 具体的には、道路や公園などの公共の場所で日本以外の国や地域の出身者に対し、住んでいる地域からの退去をあおったり、身体や自由、財産などに危害を加えると告知したり、著しく侮辱したりすることなどを禁じています。/ 市議会で福田紀彦市長は「すべての市民が不当な差別を受けることなく、生き生きと暮らせる人権尊重のまちづくりの推進を図っていきたい」と述べ、条例案を提出しました。/ ヘイトスピーチなどの差別的言動に対し刑事罰を科す条例は、成立すれば全国で初めてとなります。/ 条例案は、来月から行われる代表質問や委員会での議論を経て来月12日に採決が行われます。」
2019/12/6
「今議会で成立」大勢 常任委採決持ち越し 川崎市
政治行政 神奈川新聞 2019年12月06日 22:55
「川崎市議会は6日、文教常任委員会を開き、ヘイトスピーチを繰り返した人物に刑事罰を科す「市差別のない人権尊重のまちづくり条例案」の審議を行った。自民党から継続審議の提案が出されたが、今議会で成立させるべきだとの意見が大勢を占めた。自民は付帯決議を再提案したものの、これにも反対意見が出された。委員会採決は9日に持ち越しとなった。/ 自民の浅野文直氏は「ヘイトは撲滅すべきだが、なぜ本邦出身者と区別し、本邦外出身者へのヘイトだけ罰するのか疑義を持つ人は多い」と指摘。外国人への差別的言動は許されないとしたヘイトスピーチ解消法を根拠とする以上、罰則対象は同法に基づくものとなり、立法事実も市内で繰り返された在日コリアンを排斥するヘイトデモであることを市は再三説明しているが、浅野氏は説明不足を理由に継続審議を求めた。/ 賛同したのはチーム無所属のみ。共産党と公明党、みらいはそれぞれ「ヘイトは許さないと一刻も早く示そうという市の決意は理解する」「市民が苦しんでおり喫緊の課題。今議会で採決すべきだ」「ヘイトスピーチ根絶決議など議会としても意思を示してきた」と条例案への賛成を表明した。/ これを受け自民は付帯決議を再提案。市民への周知徹底に加え、「日本国民への差別的言動が認められる場合、条例の罰則の改正も含め必要な施策、措置を講ずる」との文言を盛り込んだ案を示したが、共産の片柳進氏は「条例案の基となった解消法に『日本国民への差別的言動』は含まれない。削除すべきだ」と反対を表明。各会派は持ち帰って検討することになった。/ 自民案について文教委員で公明の沼沢和明氏は「解消法から逸脱しており到底受け入れられない。法改正なしに『罰則の改正』など条例でできるはずがない」と反発。同じ文教委員でみらい団長の岩隈千尋氏も「解消法の付帯決議と同様のものなら許容範囲だが、現状の案では賛成できない」と言明した。」
2019/12/7
2019/12/9
差別根絶条例成立へ 川崎市議会委 全会一致で可決
政治行政 神奈川新聞 2019年12月10日 05:00
「あらゆる差別を禁止し、とりわけ被害が深刻なヘイトスピーチに刑事罰で対処する「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例案(差別根絶条例案)」が9日、市議会文教常任委員会で可決された。「議会も行政も市民を守るという観点で取り組まなければならない」とする自民党をはじめ各会派の委員が賛意を示し、全会一致での決着となった。国の法律に先んじ、ヘイトスピーチを犯罪として刑事規制する全国初の条例は12日に本会議で採決され、可決・成立する見通し。/ 委員会採決を前に自民は「この条例を基にヘイトスピーチ根絶に臨んでいく」と賛意を表明。共産党と公明党、みらい、チーム無所属の各会派もそれぞれ「ヘイトを許さない決意を示す重要な意義がある」「全ての市民の平和と安全を担保するのは政治の責任」などと賛成理由を述べた。/ 条例案は、全ての市民が差別を受けることなく暮らせるまちづくりを掲げ、国籍や人種、性的指向、出身、障害などを理由にしたあらゆる差別的取り扱いを禁じる。ヘイトスピーチについては市内の在日コリアンが執拗(しつよう)に攻撃されている現状を踏まえて刑事罰を導入。表現の自由に配慮し、勧告、命令に従わずに違反行為を繰り返した人物を市が刑事告発する。検察庁に起訴され、裁判所で有罪となれば最高50万円の罰金が科せられる。/ 採決に当たって自民は「日本国民への差別的言動が認められる場合、罰則の改正も含め必要な措置を講ずる」とする付帯決議を提案していたが、日本国民への差別的言動が立法事実として存在しないことや拡大解釈されて権力の乱用につながる危険性から各会派が反対。意見をすり合わせた結果、「本邦外出身者以外の市民に差別的言動による著しい人権侵害が認められる場合、必要な措置を検討する」に修正され、共産を除く賛成多数で採択された。/ 条例案に対し「罰則は表現の自由を侵害する恐れがある」「本邦出身者を差別するもので憲法違反」などとする陳情が5件出されていたが、いずれも否決された。」
2019/12/12
川崎市、ヘイトスピーチ禁止条例可決 最高罰金50万円
2019年12月12日11時29分
「ヘイトスピーチを禁止し、全国で初めて刑事罰で対処することを盛り込んだ川崎市の条例が12日、定例市議会本会議で可決、成立した。罰則部分は来年7月に施行され、外国にルーツを持つ市民らに対して差別的言動を繰り返した場合、最高50万円の罰金を科す。/ 差別のない人権尊重のまちづくり条例は罰則対象の差別的行為について、市内の公共の場所で、拡声機を使ったり、プラカードを掲げたりするなどと規定。市長は表現の自由に配慮し、審査会に意見を聴きながら、ヘイト行為をやめるように「勧告」「命令」してもなお繰り返した場合に刑事告発する。検察が起訴し、裁判で有罪になると罰金が科せられる。/ 川崎市では在日コリアンを標的にしたヘイトスピーチが繰り返され、2016年に国の対策法ができるきっかけになった。ただ、法律は罰則は設けず、「不当な差別的言動は許されない」と基本的な考え方を示しただけだった。/ インターネット上のヘイト行為も深刻だが、今回の条例では、認定の難しさなどから刑事罰の対象になっていない。」
欠席(離席)したのはこの二人だそうで
— 石野雅之 (@nocchi99_antifa) 2019年12月12日
秋田 恵(あきた めぐみ) https://t.co/V7Rb7qGZx3
重冨 達也(しげとみ たつや) https://t.co/p1ntnlyBc0 https://t.co/Cac1Ju7myB
川崎市ヘイト条例でネットは対象外 在日コリアンの苦悩
大平要、編集委員・北野隆一 2019年12月12日11時35分
「在日コリアンらに対するヘイトスピーチを禁じ、全国で初めて刑事罰で対処することを盛り込んだ条例が12日、川崎市議会で可決、成立した。差別抑止の取り組みとして高く評価する声がある一方、インターネット上のヘイト行為は刑事罰の対象から外れ、積み残された課題になっている。/ 今回の条例では、特定の人種や民族への差別的な言動を明確に禁じた。ただ、何を「ヘイトスピーチ」とするかにあたっては、憲法が保障する「表現の自由」との兼ね合いから厳密に規定する必要があった。/ 川崎市内の公共の場所で、外国出身者やその子孫に対し、「拡声機を使う」「プラカードを掲げる」「ビラを配る」といった手段を用いたうえで、「出て行け」「死ね」「ゴキブリ」といった言葉を発することが、今回の条例で罰則の対象となるヘイトスピーチだ。/ ただ、ヘイトスピーチは、街の中だけで行われるのではない。ネット上の書き込みや動画を使った誹謗(ひぼう)中傷は、差別を受ける人たちを苦しめ続けている。」
「私たちは、守られました」川崎でヘイト禁止条例成立、在日コリアンたちが喜びの声
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/kawasaki-hate5
「日本人差別」をめぐる攻防も。川崎でヘイト禁止条例が成立、その中身は?
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/kawasaki-hate4
川崎市反差別条例の意義
20191212 弁護士 師岡 康子長いですが重要なのでご紹介します。
1.差別のない社会を作る歴史的な意義
繰り返されてきた外国ルーツの市民への差別的言動による深刻な被害が立法事実であり、それを止めなければならないこと、かつ、現行法や啓発・教育では止められず、止めるために禁止条項と刑事罰規定を置くことを全会一致で採択したことは、差別のない社会に向けた歴史的な意義がある。
これまで日本では法規制が必要なほどの人種差別がないとの認識が国、地方公共団体、さらには法律家も含めて一般的であり、被害者は差別被害の事実すら認められず、我慢を強いられてきた。
2016年施行のヘイトスピーチ解消法ではその深刻な被害と解消の必要性がはじめて認められ、差別根絶に向けてのスタートラインに立った。
しかし、解消法には禁止規定も制裁規定もないため、施行後3年半経ったが、ヘイトデモ・街宣やネットヘイトの横行などを止めることができないままである。
今回川崎市は、解消法はもちろん、脅迫罪、名誉毀損罪などの現行刑法は特定の人が対象で、「○○人は出ていけ」等の不特定の集団に対する差別の煽動には適用できない法制度の欠陥を直視し、被害を実際に止めるために差別的言動そのものに対する日本の法制史上はじめての刑事規制の新設に踏み切った。
これまでの多くの行政や法律家が、差別はよくないと口先では言いつつ、法規制は濫用の危険性があるとして、実際に止める策をとらず、実質的に差別を容認し、被害者たちに屈辱と恐怖と絶望を強いてきた。
しかし、川崎市は、被害者の苦しみを受け止め、国の規定を超える刑事規制を設けてまで、市が被害を止める、被害者の盾になる決断をし、それを市議会が全会一致で支えた。差別が実際に是正されるのか先が見えない暗闇の中にいた被害者にとって、また、差別のない社会を願うすべての人々にとって、今回の全会一致の条例制定は、日本の社会が、マジョリティが差別根絶に向け変わりうるかもしれないとの希望をもたらすものである。
川崎市の勇気ある決断により、川崎市の取組をモデルとして、相模原市をはじめとして、他の自治体でも本気で差別をなくす取組が広がるだろう。さらに、国の法制度の欠陥を改める大きな契機となることを期待したい。
2.差別を犯罪とする国際人権基準に合致
もとより差別は刑事規制のみでなくなるものではなく、教育、啓発を含む包括的な取組が不可欠だが、今ある差別被害を即時に止める手段として、また、差別が殺人などと同様、人間社会にとって決して許されないことを示す教育、啓発上の意味からも、差別を犯罪とすべきというのが国際人権基準である。日本はこの点で国連人権諸条約の監視機関から度重なる是正勧告を受けてきた。たとえばG7において、アメリカでも州法レベルではヘイトスピーチの刑事規制があり、一切刑事規制を行っていないのは日本のみである。
今回の条例は、日本が締約国である人種差別撤廃条約及び自由権規約上の義務に応えるものである。自由権規約に入ってからは40年、人種差別撤廃条約に入ってから24年も経ってしまったが、条例という形で、やっと義務を履行する第一歩を踏み出したことになる。
政府は現在、自由権規約委員会に対してヘイトスピーチ対策の進展状況について回答する報告書作成の最終段階であり、今回の条例制定を義務履行の第一歩として報告すべきだろう。
3.実効性の確保と表現の自由
本条例により、ヘイトスピーチを行い、再び行わないよう勧告、命令を出されたにも関わらず行った場合には、犯罪として捜査され、起訴されれば、50万円までの罰金刑に処せられる。前科ともならない行政処分である過料5万円とは重みが異なり、抑止効果が期待できる。
他方、本条例の刑事規制は、何より、差別を犯罪とする日本ではじめてのものであり、違憲とならずに出発させるため、かなり慎重に設定されている。まず、3回繰り返した場合の命令違反という方式なので、意図的に差別を繰り返す場合のみが対象となっている。次に、警察が現場で表現内容を判断するのではなく、市が専門家による第三者機関の判断を踏まえて判断する仕組みは、捜査機関及び時の行政権力による濫用をチェックするものであり、評価できる。さらに、市は最終的に捜査機関に告発するのみで、検察が起訴するかどうか決め、刑事裁判で裁判官が認定する制度であり、表現の自由の過度の規制や濫用を防ぐ手続きが確保されている。刑事規制の対象となる行為も、場所、行為態様、手段により解消法より限定され、明確化されている。
このような慎重な仕組みであるため、実効性確保の観点からは、勧告の有効期間が6月であるなど懸念される点もあるが、市議会でも今回の条例は出発点であり、現在進行中の被害を止めるために、一刻も早く運用を開始し、規則・ガイドライン制定や運用上の取組で対応できるところは対応し、あとは運用しながら実態に合わせて実効性を確保するよう見直していくと確認された。行政、市議会と市民が知恵と力をあわせ、運用面も含めてヘイトスピーチを止められる実効性ある条例に育てていくことが期待される。(終わり)
https://twitter.com/aritayoshifu/status/1205338491967590400 から
2019/12/16
差別根絶条例、「史上初、意義大きい」 弁護士講演 川崎
社会 神奈川新聞 2019年12月15日 05:00
「川崎市で12日に成立したヘイトスピーチに刑事罰を科す条例の意義を学ぶ講演会が13日夜、同市川崎区の市ふれあい館で開かれた。ヘイトスピーチの問題に詳しい師岡康子弁護士は「差別は犯罪」と定めた全国初の条例がもたらす変化を解説。「市や市議会の姿勢を評価し、差別をなくすための取り組みを共に出発させよう」と呼び掛けた。/ 同館が主催する人権尊重学級の一つ。条例の成立翌日の開催となり、熱心にメモを取る参加者の姿が関心の高さをうかがわせた。/ 「条例の制定を皆さんと祝いたい。被害者の勇気ある訴えを市民が支え、世論を動かした結果だ」と切り出した師岡弁護士は「日本の歴史上初めて差別を犯罪と位置付けた意義は大きい」と国の法律に先んじて刑事規制に踏み込んだ条例を高く評価した。/ 市議会の採決では全会一致で可決されており、「へイトスピーチを止めるには罰則が必要という認識が自民党を含めて共通になった」と強調。「他の自治体が続くための大きな一歩になり、何より本来、法規制するべき国に差別禁止法を求める力になる」と指摘した。/ 差別的言動を繰り返した者を市が刑事告発する「川崎方式」にも言及。「市の告発を受けた検察庁、裁判所は差別的言動があったか否かを判断する。差別について研修し、基準をつくらないと対応できない。条例が検察、裁判という国単位の仕組みを変えていくことになる」との見通しを示した。/ 市は条例の解釈指針などを定めるとしており、師岡弁護士は「インターネット上のヘイト被害に対する措置を含め、実効性のある運用を市民が要望し、一緒につくっていくことが大事だ」とも提案した。/ 「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例(差別根絶条例)」は全ての市民が差別を受けることなく暮らせるまちづくりを掲げ、人種や国籍、性的指向や出身、障害などを理由にしたあらゆる差別的取り扱いを禁止。在日コリアンを標的に行われているヘイトスピーチについては深刻な被害がやまない現状を踏まえ、最高50万円の罰金を科すことにした。罰則は来年7月1日から適用される。」
2020/3/17
「ウジ虫○○人」はヘイト 罰則対象を例示 川崎市人権条例の解釈指針
毎日新聞2020年3月17日 09時41分(最終更新 3月17日 10時11分)
「川崎市は16日、ヘイトスピーチのデモに刑事罰を科す人権条例の解釈指針を公表した。デモの摘発は「表現の自由」に関わるため、7月の全面施行を前に判断基準を示した。/ 条例で罰則対象になるのは、外国出身者を理由に①居住地域から退去させることを扇動・告知する②生命、名誉、財産などに危害を加えることを扇動・告知する③人以外のものに例えるなど著しく侮辱する――という3ケース。解釈指針では、例として「○○人を川崎からたたき出せ」「○○人は殺されても仕方がない」「ウジ虫○○人」などを挙げた。/ 一方、基本的に罰則の対象とならない行為として「会員のみの会合」「単なる批判」「歴史認識の表明」などを例示した。/ 市長は解釈指針を基にヘイトかどうかを1次判断し、さらに学識経験者による審査会の意見を聴いて最終判断する。市長の勧告・命令に従わずに条例違反を繰り返すと50万円以下の罰金を科される。」
ヘイト対策条例で解釈指針 川崎市、7月全面施行
「川崎市は17日までに、ヘイトスピーチ対策として全国で初めて刑事罰を盛り込んだ差別禁止条例の「解釈指針」を公表した。容認されない文言を例示する一方、政治的主張などを対象外とし、表現の自由が制限されるとの懸念に配慮を示した。同条例は昨年12月の市議会で成立、今年7月1日に全面施行される。/条例は道路や公園など公共の場で拡声器を使ったり、ビラを配ったりして、日本以外の特定の国や地域の出身者に差別的な言動をすることを禁止。居住地域からの退去や身体への加害を扇動することや、人以外のものに例えて侮辱することも禁じている。/ 解釈指針は、禁止する文言として「川崎からたたき出せ」「日本から出て行け」などと例示。一方で「歴史認識の表明」や「政治的な主張」については、基本的に対象外とした。/ 条例は違反者に勧告、繰り返すと命令を出し、従わなければ氏名を公表するとしている。同時に刑事告発し、裁判で有罪が確定すれば、50万円以下の罰金が科される。/ 指針は手段や言動の中身を変えても一連の違反と見なすと明記。罰則の対象は行為者だけでなく、使用者の法人や政治団体も含まれるとした。」
2020/3/18
解釈指針「恣意的運用しない」 ヘイト罰則条例で川崎市長
「川崎市の福田紀彦市長は17日の定例会見で、「市差別のない人権尊重のまちづくり条例」の解釈指針について「条例がどう運用され、どういう行為に適用されるのかが分かってもらえる。行政が恣意(しい)的に運用しないことが重要だ」と述べた。」
2020/4/2
ヘイト条例運用部署新設 全面施行へ本腰 川崎市
政治行政 神奈川新聞 2020年04月02日 05:00
「川崎市は1日、あらゆる差別の根絶を掲げ、ヘイトスピーチに刑事罰を科すことを盛り込んだ「市差別のない人権尊重のまちづくり条例」の運用を担う新たな部署を設置した。差別的言動の調査やその対策、人権侵害の被害者救済など条例に基づく施策を受け持つもので、その実効性を左右する重要な役目を担う。/ 市人権・男女共同参画室に「人権尊重のまちづくり担当」を新設。担当課長と係長2人、専門調査員の計4人を配置した。/ 罰則対象となるヘイトスピーチの調査、記録をヘイト団体のデモや街宣の現場などで行う。罰則につながる勧告、命令、公表、刑事告発を行う際には、意見聴取する第三者機関「差別防止対策等審査会」に判断材料を提示。そのための情報収集にも当たる。/ 条例では、インターネット上のヘイトスピーチに拡散防止措置を講じると明記しており、差別的言動を検索するネットモニタリングにも委託先の民間企業とともに取り組む。ネット上の差別書き込みを含む人権侵害の相談を受け、必要な支援を行うことも義務付けており、関係部署や地方法務局、人権団体などと連携し、被害者の救済を図っていく。広報・啓発事業も担当する。/ 同室の池之上健一室長は「今年は条例に基づき具体的な取り組みを始める重要な1年。担当が設けられた分、着実に取り組みを進め、市民に還元していかなければならない」と話す。/ 条例に基づく人権施策推進基本計画の策定を諮問する「市人権尊重のまちづくり推進協議会」と、差別防止対策等審査会のメンバーも同日までに決定。月内にも初回の会合を開く。/ 新年度の組織改編では外国人市民の一層の増加を見据え、市民生活部に多文化共生推進課も新設。廃止した同室の外国人市民施策担当と同部の交流推進担当の役割を一本化し、外国人市民代表者会議や共生社会の実現に向けた業務に携わる。
2020/4/8
川崎市、差別防止対策等審査会のメンバーを発表
「川崎市は8日、市差別のない人権尊重のまちづくり条例に基づきヘイトスピーチの認定に当たる差別防止対策等審査会の委員を発表した。人権侵害の被害者救済と権力乱用防止の観点から実務経験をポイントに人選した。条例はヘイトスピーチを繰り返した人物に最高50万円の罰金を科すことを定めており、審査会は市が勧告、命令、氏名公表、刑事告発を行う際に妥当性などを審議する。/ 石井忠雄弁護士、最所(さいしょ)義一弁護士、人見剛早稲田大大学院教授、棟居快行(むねすえ・としゆき)専修大法科大学院教授、吉戒(よしかい)修一弁護士の5人で任期は2年。/ 石井弁護士と吉戒弁護士は元裁判官で法務省人権擁護局長の経験者。最所弁護士はインターネットの問題に詳しく3月まで市の人権施策に関する有識者会議の委員を務めた。棟居教授は憲法学者。人見教授は行政法の専門家で市行政不服審査会の委員でもある。/ 10日に最初の審議会を予定していたが、新型コロナウイルスの感染防止のため開催を中止。罰則規定の施行は7月1日からだが、審査対象であるインターネット上のヘイトスピーチの対策は今月1日から始まっており、市人権・男女共同参画室は「審議を必要とする事案が出てきた段階で招集を検討したい」と話している。」